式 辞  本日ここに、ご来賓一六三名、同窓生一八七名のご臨席のもと、函館工業高等専門学校創立五十周年記念式典を執り行えますことは、私ども教職員、学生及び本校関係者一同にとって大きな喜びとするところであります。  高等専門学校は日本の産業界の要請に応えるべく昭和三十七年に新しい学校制度として発足しました。その第一期十二校の一つとして、函館工業高等専門学校は、地元の期待と支援を受けて、昭和三十七年四月に機械工学科、電気工学科及び土木工学科の三学科三学級で開校されました。その後、昭和四十一年に工業化学科を新設し、二十周年を迎える頃までには現在の施設がほぼ完成しました。  平成三年度には、急速に進展するコンピュータ技術分野へ対応すべく情報工学科が増設され、情報工学科棟が完成しました。更に、新分野の産業へ対応すべく、平成七年には土木工学科から環境都市工学科への改組、平成八年には工業化学科から物質工学科への改組、平成十二年には電気工学科から電気電子工学科への改称を行うとともに、教育内容を見直して、現在の五学科五学級に至っています。  また、平成十六年に、生産システム工学専攻、環境システム工学専攻の二専攻を有する専攻科を設置いたしました。同じく平成十六年度より、全国の国立高専は独立行政法人 国立高等専門学校機構のもとに一括して運営され、函館高専もその一つとして発展してきております。  函館高専は、実践的かつ専門的な知識及び技術を有する創造的な人材の育成に務めて参りました。更に、専攻科においては、インターンシップやPBL教育と略されるプロジェクト型授業を取り入れ、複眼的視野を持つ技術者を育成しております。これまでに総数六千八百名余の有為の卒業生を各界に輩出し、その活躍の場は函館地域はもとより、日本そして世界に及んでおります。  函館高専の特色ある取組の一つが、ものづくりを基礎にした複合型技術者教育です。これは、企業の現役・退職技術者をマイスターとして招へいし、地域ニーズに即した課題に学生がチームで取り組むPBL授業で、これまでに多くの成果品を生み出し実用に供してきました。この取組には、学生・地域からの評価のみならず、教育界、学協会からも高い評価を戴いてきております。  学生の国際交流にも力を入れ、低学年から専攻科生まで、様々な交流事業、英語授業を展開しています。国際交流においては、本校独自の取組もありますが、高等専門学校機構のスケールメリットを最大限に活かし、機構の事業又は高専間の連携事業として進めている取組に、本校が加わる例も数多くあります。  高専の使命の一つでもあります地域連携では、道南地域の中小企業の研究開発部門としての機能を果たすとともに、企業の若手技術者のスキルアップ支援を継続して行っております。更に、地域の小中学生への理科教育支援は充実した歴史があります。  函館高専が今日まで発展を続け、地域における伝統校として五十周年の節目を迎えることができますのも、関係各位のご理解とご支援のお陰でございます。特に、歴代校長、教職員の教育に対する強い熱意、国からの施設整備と運営資金、保護者の会である育成会による組織的・継続的な学生活動支援、地域連携協力会を初めとする地域そして企業からの暖かいご支援並びに同窓生の母校への熱い想い、この全てが高専を支えてきてくださいました。学生の皆さんもこのご支援と期待を感じつつ日々研鑽に励み、立派に成長し卒業されています。  また、この度の五十周年記念事業においては、地域企業、地域連携協力会、育成会、同窓生、教職員、学生、保護者等多くの皆さま方から記念事業基金に多額のご寄付をいただきました。この場をお借りしまして感謝の意を表明させていただきます。  創立五十周年を迎えるに当たり、函館高専では、祝賀を行うと共に今後の新たな発展を目指して五つの事業を立ち上げました。まず、学生支援基金の創設では、国際交流基金制度を制定し、学生の国際交流の活性化を図ると共に様々な活動を支援していきます。  二つ目に、卒業生との交流事業では、明日が第一回となるホームカミングデーの設定、卒業生の本校教育への参画などが行われます。三つ目に、地域社会との交流事業では、地域連携活動の強化や地域企業からの学生・卒業生への情報発信等を支援します。これらはいずれも息の長い事業であります。  四つ目は、記念誌等の刊行、デジタルアーカイブの作成、そして、最後が本日の記念講演会、記念式典及び祝賀会の開催です。幸い多くの同窓生及び地域の皆さま方からこの記念事業にご賛同をいただいた次第でございます。  さて、函館高専は平成二十五年度より、全国の高専に先駆けて大規模な高度化再編を実施いたします。従来の機械・電気電子・情報の三分野の学科は生産システム工学科に統合され、物質工学科は物質環境工学科に、環境都市工学科は社会基盤工学科に生まれ変わります。  私どもは十分な時間をかけて調査等を行い、企業や地域のニーズを探りました。その結果、専門分野の枠組みを超えた広い視野を持ち、複数の分野の技術を融合しマネジメントする能力と、国際化に対応できる素養を身につけている人材の育成が急務であるとの結論に至り再編案をまとめました。  来年度からの再編においては、新分野に対応して参ります。生産システム工学科は医療・福祉分野、物質環境工学科は農業分野、社会基盤工学科は情報技術との融合を新分野として、それぞれ柔軟に対応できる人材育成も目指しております。  函館高専は、次年度より、これまでに進めてきた特色ある取組を継承し発展させながら新たな五十年の歴史に踏み出すところでございます。地域と共に歩む函館高専は、地域と世界を結ぶ架け橋の役割も果たして参ります。  最後になりますが、ご参列いただきました皆さま方には、函館高専の新しい取組にご理解をいただきますとともに、これまでと変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。  皆さま方のご健勝とご発展をお祈り申し上げつつ、式辞を締めくくらせていただきます。 平成二四年十月十二日 函館工業高等専門学校長 岩熊敏夫